保育士の離職率は本当に高いのか?
ニュースで、「保育士不足」という言葉を聞くとがたまにあります。また、「○○保育園の保育士が、一斉退職しました!」というようなセンセーショナルなニュースに出会うことも年に数回はあるかなと思います。このようなニュースに触れていると、「保育士って大変な仕事なんだな。多分、一旦就職しても、辞めたくなる人が多いんだろうなぁ」と想像する方も多いのでは無いかと思います。
そもそも離職率とは?厚生労働省による定義
離職率という言葉を耳にすることは多いと思います。その響きから、離職率が高い職場は辞める人が多いのかなと想像はつくと思いますが、そもそも離職率とは何でしょうか?
厚生労働省の定義では、
常勤労働者数に対する離職者数の割合
とのことです。例えば、2025年度の離職率を計算する場合は、このようになります。
2025年の離職者数が5人で、2025年3月の常勤労働者数が20人だった場合、5/20=25%となります。
3年離職率と言えば、離職者の数える期間が3年になり、5年離職率と言えば5年になります。
全産業の離職率の最新のグラフ
保育士の離職率を見ていく前に、全産業の離職率を見ていきましょう。2024年で一番離職率が高いのは、サービス業で19%。つづいて、宿泊業18.7%でした。保育士は、医療、福祉に属していまして13.1%。産業別で見ると4番目となっていて、全産業11.5%と比べるとやや高い数値になっています。
保育士の離職率の最新のグラフ
産業別で見てみましたが、「医療、福祉」というと、医師や看護師、介護職なども含まれており、少々分類方法が粗い印象があります。そのため、保育士のみの離職率のグラフも作成してみました。

出典:社会福祉施設等調査の各年度「H14-02 保育所等・地域型保育事業所の常勤換算従事者数,職種-保育士のうち幼稚園教諭免許保有者-保育教諭のうち保育士資格保有者・常勤-非常勤、施設の種類・経営主体の公営-私営別」「H16-01 保育所等・地域型保育事業所の保育士・保育士資格ありの者の採用・退職者数,都道府県、常勤-非常勤、経営主体の公営-私営別」
(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450041&tstat=000001030513)
2019年度から2023年度まで大きく離職率の変動はなく推移していることが分かります。その値は、全体で8.44%(2023年度)でした。全産業離職率平均11.5%と比較すると、保育士の離職率は高くない、むしろ、低いと言うことが分かります。また、公営・私営で見比べると公営の方が離職率が低いという傾向があります。
ちなみに、ステラ幼児教室・個別支援塾の離職率は、22年度は19.4%と高かったものの、23年度4.8%、24年度4.6%と全産業と比較してもとても低い値でした。これは、労務周りの制度を整え、処遇を見直してきたことが大きいと考えています。
3年以内離職率、5年以内離職率

出典:社会福祉施設等調査の各年度「H14-02 保育所等・地域型保育事業所の常勤換算従事者数,職種-保育士のうち幼稚園教諭免許保有者-保育教諭のうち保育士資格保有者・常勤-非常勤、施設の種類・経営主体の公営-私営別」「H16-01 保育所等・地域型保育事業所の保育士・保育士資格ありの者の採用・退職者数,都道府県、常勤-非常勤、経営主体の公営-私営別」
(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450041&tstat=000001030513)
2019年度から2023年度までのデータを利用して、3年以内離職率、5年以内離職率などを計算してみました。3年以内離職率は全体で25.27%、5年以内離職率は42.62%でした。
実は保育士の離職率はそんなに高くない
イメージとして「保育士は離職率が高い」と考えていた方もいたかもしれませんが、このように保育士の離職率は高くない、むしろ、低いということが分かったと思います。ニュースなどで「保育士不足」と叫ばれているのは、女性の就労率向上に伴い共働き世帯が増えて、0歳児-2歳児の保育の需要が高まっていることが原因だと思います。また、保育士の人員配置基準を見直して、手厚い保育サービスを提供できるような制度改革も進行中で、この影響も大きいと思いますし、手厚い保育サービスを将来することを考えると更に多くの保育士が求められることになります。
保育士の退職理由ランキング
東京都が毎年実施している保育士実態調査結果によると、退職理由で最も大きいのが「給与が安い」(61.6%)でした。続いて、「仕事量が多い」(54%)、「労働時間が長い」(35.4%)と続きます。給料、仕事量、労働時間が退職理由ワースト3なので、就労環境の改善が事業者には求められていることが分かります。
それでは、退職理由ワースト4の項目をそれぞれ見ていきましょう。
ランキング1位!給与が安い
自治体によっては、経験年数や年齢で保育士の給料を決めているところもあり、保育士の給料は、国の方針の影響を大きく受けます。このため、給料が安いと思われる原因は、国にもあるということができます。この事態を国も重く捉えているようで、保育士の処遇改善が何度も行われています。

出典:令和7年度以降の処遇改善等加算について(こども家庭庁)
こども家庭庁の資料によれば、処遇改善を毎年のように実施して、2013年度以降で34%改善されたそうです。それでも、全産業と比較したときに給料は低く、月収換算で全産業36.9万円に対して、保育士は32.1万円となっており、更なる処遇改善が必要なことが分かります。
ランキング2位と3位の仕事量が多い、労働時間が長いをまとめて解説
公的統計資料によると保育士の残業は、月3時間から4時間くらいととても低い数字になっています。これは、ランキング2位に「仕事量が多い」という理由が入ることもふまえると、実情との乖離がありそうです。色々調べてみると、公的資料に掲載されている数字はあくまで正規の残業時間のみで、サービス残業がカウントされていないことが分かりました。
タイムカードを押した後に、まだ書類の作成をしたり、運動会などのイベントの準備をしたりとサービス残業をしているのが実態なのかもしれないです。また、東京都保育士実態調査結果によれば、職場改善を希望する項目に「事務・雑務の軽減」(40.1%)が含まれており、様々な報告書類の作成が、多忙感に寄与している可能性があります。
ランキング4位!職場の人間関係
テレビドラマなどでは、お局ベテラン保育士が若手保育士に陰湿ないじめをするというところが描かれたりすることがあります。実際はドラマほどのことはやっていないとしても多少はそういうことはあるのかなと思います。
ただ、入職前にどんな職場なのかを知ることはなかなか難しいのが現実だと思います。ホームページなどにも園の情報は掲載されていますが、ホームページでの情報をどこまで信じていいかは分かりません。採用面接の前に、職場見学をさせていただいたり、可能であれば、タイミーなどで求人探し、パートタイムで働いてみたりして、自分自身と会っているかどうかを確認すると良いのではと思います。
ステラ幼児教室では、採用面接前の事業所見学なども積極的に受入れています。是非、気になる方は、お気軽にご連絡ください。
保育士が求められる職場とは?
保育士と言えば、保育園で働くことが定番ですが、もちろん保育園以外にも職場はあります。最後に、どんなところで働くことが可能なのかを見ていきましょう。
保育園(認可・認可外)で働く
子どもの頃に保育士になりたいと思った人は、大体保育園を想像するのではないでしょうか?保育園は、法的には保育所と呼ばれており、大きな括りで認可、認可外で分けることができます。認可保育園というのは、自治体の認可が下りている園のことで、施設をつくる費用や運営費用まで多くの費用が公費でまかなわれている保育園です。公費がたくさん入っているので、書類の整備等自治体が決めた様々なルールには従う必要があり、書類仕事などは煩雑になると思いますが、廃業することは少なく、安定した収入・キャリアが手に入るのが特徴です。中でも、公営の保育園の従事者は、公務員ということになるので、更に安定した待遇になります。この点が、公営・私営で比較したときの離職率の差に繋がっているのかもしれません。
認可外保育園は、国の設置基準を満たしてはいますが、自治体が認可を出していない保育園のことを言います。認可保育園よりも金銭的な助成が少なく、このため、自由度の高い保育を提供することが可能です。英語教育や英才教育など独自の方針に沿った保育サービスが提供可能です。経営の安定度は低く、利用者による負担割合が高くなるので収益性も認可保育園に比べるとよくありません。ベビーホテル、事業所内保育施設、託児所、インターナショナルスクールがこれに該当することが多いです。安定性よりも、自由度高く働きたいと考えている方に向いている施設です。
認定こども園で働く
認定こども園とは、教育・保育を一体的に行う施設で、いわば幼稚園と保育所の両方の良さを併せ持っている施設のことです。2006年10月に創設されたまだ新しい施設です。認定こども園は、更に、幼保連携型、幼稚園型、保育所型に分かれており、それぞれ必要な資格も変わります。幼保連携型では、保育教諭の資格が必要です。保育教諭には、保育士と幼稚園教諭の資格を両方持っていればなることができます(2030年までは、保育士資格のみでも「保育教諭」として勤務可能)。また、幼稚園型で、保育士のみの資格しか無い場合、3歳未満児担当は可能ですが、3歳以上児の担当になるには、幼稚園教諭免許が必要です。
小規模保育園か事業所内保育所で働く
小規模保育所は、定員19人以下の保育所のことです。大体0歳から2歳児が通うことが多いです。対象年齢幅も狭く、勤務している保育士も少数で、未経験でも勤務しやすい環境なのかなと思います。また、事業所内保育所は、ある程度大きな企業がその企業の職員が自分の子どもを預けることを想定した保育所です。
放課後等デイサービスか児童発達支援事業所で働く
障害がある子どもが対象で、発達支援と預かり支援を行っています。児童発達支援は、主に0歳~年長までで、放課後等デイサービスが主に小1~高3までが対象です。幼児と多く関わりたいと思うのであれば、児童発達支援で勤務することをオススメします。業務内容としては、子どもの発達支援・預かりだけではなく、送迎や食事の提供も行います。
また、放課後等デイサービスと児童発達支援事業所の2つの認可を同時に得ている事業所も多数あります。
障害児の成長に関わってみたいと考えている保育士さんは年々増えている印象です。もし興味がありましたら、「放デイ 求人」「児発 求人」等のキーワードで検索してみてください。
乳児院、児童養護施設で働く
あまり知られていない施設ですが、病気や経済的困難など様々な理由で親と離れて生活することになった子どもを預かる施設です。どちらも子どもたちが生活の拠点とする場所なので、施設自体は365日24時間体制で運営されます。そのため、夜勤専従保育士などの庶務もあり、18時から翌朝8時などの長時間の固定シフトで勤務することができます。主な仕事は、子どもの見守り・ケア、生活支援、記録・報告、子どもとの関わりになります。
ステラ幼児教室ってどんな職場?
最後に、ステラ幼児教室についてご案内します。ステラ幼児教室は、児童発達支援事業所です。障害を持つ0歳から6歳(年長)までの子どもが通っています。50分の個別マンツーマンによる発達支援に特化したサービス提供をしているため、送迎や食事提供などの業務がないのが特徴です。
目的意識が明確な事業所なので、職員全員がその目的のために働いています。発達障害がある子どもたちとどのように関わると子どもたちがよりよく成長できるかについて、日々真剣に考えて、授業の準備をしてそして授業に臨んでいます。職員間の相談も密に行われていて、「子どもたちの発達支援をする」という共通目的を持つことができる保育士さんには大変働きやすい事業所だと思います。もし、興味があれば、是非求人情報を見てみてください。




