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2022.01.07
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私が大切にしている言葉「放つ、待つ、育つ」

新年明けましておめでとうございます。去年あったエピソードをご紹介します。

先日、家庭教師の教え子と先日6年越しで再会しました。大学卒業・就職が決まり、その報告とあいさつをしに来てくれました。

彼が中学生の時から高校を卒業するまで私が彼の家庭教師をしていました。中学の時は、勉強は不得意ながらもなんとか取り組んでまあまあの高校に進学しました。しかし、高校に入るとなかなか勉強にうまく取り組めなくなっていきました。学校でも事件を起こし、家庭でも軽い家出などをして周囲を困らせていました。僕の目の前でも、親子げんかを何度か目撃しました。それでも、週1回の僕の授業時間はほぼ欠かさず、家にいてくれました。

何か目標を持った勉強をさせたいと思い、英検対策にも取り組んだことがありました。週1回の授業だと埒があかないので、「毎朝6時に家庭に行って横にいてやるから、朝起きて勉強しよう」と提案して、英検の勉強をさせました。僕は、彼のとなりで自分の仕事をしながら、彼の勉強を見守り、たまに質問に答えました。そんな努力の甲斐もあって、英検には合格することができました。でも、勉強に本腰を入れる感じには全然ならなりませんでした。

定期テストごとにのらりくらりとテスト対策をして、点数を取りという勉強内容でした。あまりにも身が入らないので、偉人たちの名言などを引用して、時に、その名言をまとめたプリントを作って与えたりしていましたが、糠に釘。なかなか伝わっている感じはありませんでした。

大学には進学せずに、就職をするのかなと思っていたら、大学に行くと彼が言いました。志望大学は北陸にある理系私大。テレビCMでもちょいちょい見かける大学。その大学を調べてみると、面倒見が良いとも書いてあったので、「理系の大学は大変だよ」と告げながら、大学入試対策をしました。

入試対策と言っても、自己推薦入試の論文(作文)の添削。何度か夢や目標について一緒に考えたり、高校生活を振り返ったりしながら文章を仕上げていきました。ほぼ全入状態だったのか、サクッと合格が決まりました。

大学に進学してからしばらくは、数学の講義で出されるベクトルの問題の質問がLINEで届いたので、それに答えてあげたりしていましたが、しばらくするとそれも無くなりました。彼の大学生活は、SNSなどで垣間見れていました。趣味のゲームや同人会などに参加してました。また、友人関係でトラブルを起こしたり、単位が取れず留年が決まったりしている様子を見ていました。たまにLINEで声を掛けてみても、既読スルーされていました。

大学で留年して、結局、退学した子を何人か知っていたので、この子もその道を歩むのかなぁと残念に思っていました。だが、この子は違っていました。2度の留年が確定したとき、大学を辞めようとも考えていたそうです。そんな想いも胸にしながら、帰郷して自分の部屋の片付けをしていたら、とあるプリントがでてきたそうです。

「人生において、絶対に成功しない条件」と書かれたプリントには、こう書かれていました。

1.言われたことしかしない人
2.楽をして仕事をしようとする - そういうことが可能だと思っている人
3.続かないという性格を直さない人
4.直ぐに不貞腐れる人

これを手に取って、読み直した時に、自分が全てに当てはまり、特に4が今の自分だと感じたそうです。自分はこのままで良いのか?いや、良くない。どうしたら今のような状態を抜け出せる?すごく考え、結論は、「高校の数学から勉強し直す」ことでした。

この紙を、一人暮らし先の冷蔵庫に貼り付けて、高校数学のやり直しをスタートしました。恥も外聞も捨てて、2個下の妹に勉強を教えてもらいました。

6年越しに会った彼は大きく成長していました。

当時の自分を、本当にクソ人間だったと振り返り、取り組んだ努力の大変さを語ってくれました。大学では化学の研究をして、就活も粘り強く取り組んで化学関連の大手企業に就職が決まりました。

彼が進学した大学はとても面倒見の良い大学で、彼の勉強のやり直しにも快く手を貸してくれたそうです。大学の教授も良い人が多く、いろんな相談に乗ってくれたそうです。

僕自身、こんなに大きく成長した彼を見れて本当に嬉しかったです。再会の時、大いに食べて、大いに飲みました。苦労した経験も、笑い話として話すことができました。これも彼が苦難の乗り越えたからこそできたことです。教育の成果はどこで得られるか分からないとよく言うけれど、本当にその通りだと思いました。

何がどこで影響を与えるかは分からないです。ただ言えることは、目の前の子ども一人ひとりに対して真剣に向き合うことが、活路となりうるということ。前出のプリントは僕が渡したものだったそうです。僕はその事実を覚えていませんでしたが、彼は覚えていました。

「放つ、待つ、育つ」は僕が仕事をしていく上で大切にしている言葉の一つ。

放つ・・・考えるきっかけを与え、解き放つ。
待つ・・・相手を信じる。信じ抜く。
育つ・・・文字通り育つ。

僕自身、これがどこまで体現できているかなんて分からないです。僕も含めて、みんなもがいています。心の底では、よりよくなりたいと思っています。そこを信じ抜きたいと僕は思いました。

代表取締役 古賀 浩嗣


((冷蔵庫に貼られたプリント))

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